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植村和正

  1. はじめに 引言
すでに高齢社会となり、今後もさらなる人口構成の高齢化が予想される我が国においては、死亡者のほとんどは現在もこれからも高齢者で あろう。したがって、高齢者の生理的、心理 *\cdot社会的特徴を十分に考慮した終末期の医療とケ アが求められている。
在已经成为高龄社会的我国,预计未来人口结构将进一步老龄化,死亡者大多数现在和将来都将是老年人。因此,迫切需要充分考虑老年人的生理、心理和社会特征的临终期医疗和护理。

2. 高齢者の終末期医療およびケア 2. 老年人的临终医疗和护理

(1)高齢者の終末期とは (1)高龄者的终末期是什么

「不治」かつ「末期」の状態が終末期と定義され る。「不治」、すなわち致死性疾患で進行を阻止 する手段がない状態は医学的に定義できるが、「末期」という用語は時間概念を含むことが常で あり、一般的に定義が困難である。非高齢者の悪性腫瘍の場合は、現在罹患している疾患で遠 からず死を迎えるであろうとされた時点から終末期と言うが、時間的には6カ月以内とすること が多い。しかしながら、高齢者の場合は具体的 な定義はさらに困難であり、未だ確立されたも のはない。
“不可治愈”以及“末期”状态被定义为终末期。“不可治愈”,即致死性疾病且没有阻止其进展的手段,这在医学上是可以定义的,但“末期”一词通常包含时间概念,因此一般难以定义。在非老年人的恶性肿瘤情况下,从被认为在不久后将因当前患有的疾病而死亡的时点开始被称为终末期,时间上通常设定为 6 个月以内。然而,对于老年人来说,具体的定义更加困难,目前尚未有确立的标准。

例えば、悪性腫瘍の場合、あらゆる根治療法 が無効となった時点から終末期とすれば、その判断は容易である。しかし、高齢者においては悪性腫瘍の進行が非常に緩やかで6カ月を越え ることはめずらしくない。一方で、経過中に肺
例如,在恶性肿瘤的情况下,如果从所有根治疗法无效的时刻开始判断为末期,那么这个判断是容易的。然而,在老年人中,恶性肿瘤的进展非常缓慢,超过 6 个月并不罕见。另一方面,在过程中肺
炎や脳卒中などの他の致死的急性疾患に罹患す る確率は非高齢者よりもかなり高く、死に至る過程を予測することは相当に困難である。
炎症和中风等其他致命急性疾病的发病概率比非老年人高得多,预测死亡过程相当困难。

悪性腫瘍以外で近い将来の死が予測できるよ うな病態である重症心不全や慢性閉塞性肺疾患 などは、治療に対する反応性から死の近いこと を判断できる場合がある。しかし、これら慢性心肺疾患は確実に死に向かいながらも、この間 に急性代償不全のエピソードを繰り返していく。一時的に治療に反応すれば救命できるが、どの エピソードも高齢者には潜在的に致死性である ので正確な死期の判断は非常に難しい。高齢者、特に超高齢者においてしばしば認め られる終末期の姿として、脳卒中などの身体疾患を契機として徐々に心身機能が低下、衰弱し ていき、寝たきり *\cdot 全面介助状態に至り、肺炎、心不全などを次々に引き起こしながら最終的に死に至る例がある。この経過は全体としてみれ ば特定の疾患や臓器不全による死というよりも、個体全体の老化の結果というべきもので、いわ ゆる老衰死である。この場合も期間としては6カ月を越えることがめずらしくないし、死期の予測も困難である。
恶性肿瘤以外的病态,如重症心力衰竭和慢性阻塞性肺疾病,可能会预测近期死亡,这取决于对治疗的反应性。然而,这些慢性心肺疾病在向死亡发展时,会反复经历急性代偿性衰竭的发作。如果暂时对治疗有反应,可能会挽救生命,但每次发作对老年人来说都潜在致命,因此准确判断死亡时间非常困难。老年人,特别是超高龄者,常常表现出末期状态,身体疾病如中风等引发心身功能逐渐下降、衰弱,最终导致卧床不起和全面依赖护理,接着引发肺炎、心力衰竭等,最终导致死亡。这一过程整体上应被视为个体整体老化的结果,而不是特定疾病或器官衰竭导致的死亡,通常被称为衰老死亡。在这种情况下,持续时间超过 6 个月并不罕见,预测死亡时间也很困难。
認知症は高度に進行すると身体活動は著しく低下し椇食量も減少する。最終的には上記の老衰と同様に寝たきり *\cdot 全面介助状態になり植物状態とも区別がつかなくなる。この場合もいつ から終末期とするかは困難な問題である。仮に
认知症在高度进展时,身体活动显著降低,食量也减少。最终将与上述的衰老情况相似,变为卧床不起的全面护理状态,甚至难以与植物状态区分。在这种情况下,何时算作临终期也是一个困难的问题。假如
全面介助状態になった時点からとしても、やは り6カ月を越えることはめずらしくない。
全面介助状态开始时,超过 6 个月并不罕见。

(2)高齢者の終末期医療およびケアとは (2)老年人的临终医疗和护理是什么

遠からず死が避けられない状態となり、患者 の身体的 *\cdot 精神的苦痛の除去が医療の主眼とな るとき、これを終末期医療あるいは緩和医療と呼ぶ。その目的は苦痛 *\cdot 苦悩の緩和により患者 のQOL(Quality of Life:生活の質あるいは生命の質)を維持 *\cdot 向上することである。苦痛 *\cdot苦脳の緩和によるQOLの維持 *\cdot 向上を目的とし た行為は狭義の医療というよりも看護や介護 (ケア)に属するものが多い。それで終末期医療 あるいは緩和医療は終末期ケア(ターミナルケ ア)あるいは緩和ケアとも呼ばれる。医師、看護師、薬剤師、ソシャルワーカー、介護サービ ス担当者、臨床心理士、ボランテイアなど、家族を含めたチーム医療体制が不可欠である。
不久之后,死亡将不可避免,患者身体和精神上的痛苦的缓解将成为医疗的主要目标,这被称为临终关怀或缓和医疗。其目的是通过缓解痛苦和苦恼来维持和提高患者的生活质量(QOL)。旨在通过缓解痛苦和苦恼来维持和提高 QOL 的行为,更多地属于护理或照护,而不是狭义上的医疗。因此,临终关怀或缓和医疗也被称为临终照护或缓和照护。医生、护士、药剂师、社工、护理服务人员、临床心理师、志愿者等,包括家人在内的团队医疗体系是不可或缺的。

終末期医療およびケアにおいても高齢者の特徵がある。
终末期医疗和护理中也存在老年人的特征。

麻薬を含めた鎮痛法は近年最も進歩した緩和技術の一つである。我々の調査によれば、高齢者においては麻薬系鎮痛剤の使用量が少ないが、癌性疼痛が高齢者においては概して軽度である ことによる 1 ) 1 ) ^(1)){ }^{1)}
麻醉药物包括的镇痛方法是近年来最先进的缓解技术之一。我们的调查显示,高龄者中麻醉类镇痛剂的使用量较少,但癌性疼痛在高龄者中通常较轻。
高齢者の終末期における精神的特徴としては、混乱が生じやすいことがあげられる。感染、電解質異常、低酸素血症等の原因が明らかであれ ばその除去が行われるが、入院患者の場合はそ れ以外に「淋しさ」が原因となることがしばしば ある。鎮静療法がかえって事態を悪化させるこ
高龄者的临终期精神特征之一是容易出现混乱。如果感染、电解质异常、低氧血症等原因明确,则会进行相应的处理,但在住院患者中,除了这些原因外,“孤独感”往往也是一个原因。镇静疗法有时会使情况恶化。
ともあり、一方で家人の付き添いが混乱を防ぐ ことがある。
同时,家人的陪伴有时可以防止混乱。
そのほか、認知症は病初期には認められなく ても病状の悪化や入院の長期化にともない徐々 に現れかつ進行する。
此外,尽管在疾病早期可能无法识别,但随着病情恶化和住院时间延长,痴呆症会逐渐出现并加重。

(3)高齢者の終末期医療およびケアの問題点 (3)高龄者的临终期医疗及护理问题

上述した高齢者特有の事情により、終末期の医療およびケアにおいていくつかの問題が生じ ることになる。老衰等の死に向から過程で生じ る「椇食不能」がその一つである。
由于上述高龄者特有的情况,在临终期的医疗和护理中会出现一些问题。衰老等导致的死亡过程中的“无法进食”就是其中之一。
椇食不能を放置したいわゆる老衰死の場合、 それは脱水死であり通常苦しみは少なく死亡ま での期間も短く治療による苦痛もない。ヨーロ ッパ諸国ではこのような場合に人工栄養を施さ ないで安らかに「死なす」ことが社会的合意とし て定着しているようである2)。しかしながら、日本ではこのような場合に補液などの医療処置 を行わない例はきわめて少ない。それは、この場合の椇食不能が不可逆的なものであると判断 することが困難だからである。肺炎などの急性疾患や慢性心肺疾患の急性増悪が原因のことが多く、これを治療すれば椇食可能となることが少なくないからである。
在所谓的因衰老而导致的食物摄入不能的情况下,这实际上是脱水死亡,通常痛苦较少,死亡前的时间也较短,治疗带来的痛苦也没有。在欧洲国家,这种情况下不进行人工营养,安然“让其死亡”似乎已成为社会共识。然而,在日本,这种情况下不进行补液等医疗措施的例子极为少见。这是因为很难判断这种食物摄入不能是否是不可逆的。许多情况下,往往是由于肺炎等急性疾病或慢性心肺疾病的急性加重,如果进行治疗,恢复食物摄入的可能性并不少。
これに関して大事な点は、ヨーロッハ諸国と異なり日本ではこのような場合の医療処置に関 する国民的合意が成立していないことである。 したがって、個別事例ごとの判断となり、患者 の自己決定がきわめて重要となる。ところが、医療における自己決定権の行使が慣習としても制度としても未成熟な日本社会においては、明
这方面的重要一点是,与欧洲国家不同,在日本尚未就此类医疗措施达成全国性的共识。因此,判断将基于个别案例,患者的自我决定变得极为重要。然而,在医疗自决权的行使在习俗和制度上都不成熟的日本社会中,明...
確な事前意思が医療者に伝えられることが少な い。そうするうちに意識状態が悪化したり知的機能が低下したりしてしまい、本人の意思確認 が困難となるのである。
确切的事前意愿很少能传达给医疗人员。在此过程中,意识状态可能恶化或智力功能下降,从而使得确认本人意愿变得困难。
終末期においてはQOLの視点が重要であると述べたが、残された時間をどのような状態で過 ごすことが有意義であるかは患者個々の価値観 によるところが大きい。患者の選択が保証され るためには適切な情報開示と患者の納得および患者 *\cdot 医療者間の合意(インフォームド *\cdot コン セント)が必要であるが、知的機能が低下した場合のみならず、高齢者の場合はその情報開示 が不十分であることがしばしばある。一方で、高齢患者は意見が不安定で流動的であったり、自己表明しないこともある、と言われている 3 3 ^(3){ }^{3}
在终末期,生活质量的视角被认为是重要的,但如何在剩余的时间里以何种状态度过是非常依赖于患者个体的价值观。为了保证患者的选择,适当的信息披露、患者的理解以及患者与医疗者之间的共识(知情同意)是必要的,但在智力功能下降的情况下,尤其是老年患者,信息披露往往是不充分的。另一方面,老年患者的意见可能不稳定且流动,或者可能不愿意表达自己。

3. 日本老年医学会の「立場表明」 日本老年医学会的“立场表明”

2001年に日本老年医学会は「高齢者の終末期 の医療およびケア」に関する日本老年医学会の「立場表明」を発表した 3 ) 3 ) ^(3)){ }^{3)} 。日本の高齢者を取り巻く終末期の医療およびケアに関する現状や問題点に対して、学術団体としての倫理的立場を明らかにしたものである。
2001 年,日本老年医学会发布了关于“高龄者的终末期医疗及护理”的“立场表明” 3 ) 3 ) ^(3)){ }^{3)} 。该声明明确了学术团体在日本高龄者所面临的终末期医疗及护理现状和问题上的伦理立场。

(1)「立場表明」の背景 (1)「立场表明」的背景

1998年9月に日本老年医学会倫理委員会が発足し、高齢者医療分野における、特に終末期医療およびヶアに関する倫理的諸問題に対して議論が始まった。第一回の委員会で浮き彫りにな
1998 年 9 月,日本老年医学会伦理委员会成立,开始讨论高龄者医疗领域,特别是临终医疗和护理相关的伦理问题。在第一次委员会会议上,问题被凸显出来。

った論点は要約すると以下である。 该论点可以总结如下。
(1) 高齢者への差別(エイジズム) 高龄者的歧视(年龄歧视)
高齢であるとの理由により適切な医療が受 けられない過少医療のことで、医療を受ける権利が脅かされている、との認識である。
由于年龄原因而无法获得适当医疗的过少医疗,导致医疗接受权受到威胁的认识。

(2)患者の自己決定 (2)患者的自我决定
癌の告知は近年進んでいるが、高齢者に対 しては様々な理由により十分な情報の開示と自己決定の機会が阻害されている、という指摘である。
癌症的告知近年来有所进展,但由于各种原因,老年人获得充分信息披露和自我决策的机会受到阻碍,这一点受到指摘。

(3) 家族 *\cdot 介護者の意向
(3) 家族 *\cdot 护理者的意向
自己決定権の阻害と裏腹であるが、高齢者 の場合は患者の意向より家族の意向が医療選択 *\cdot 判断に際して重要視されている、という現実のことである。
自己决定权的阻碍与之相反的是,在老年人的情况下,家属的意向在医疗选择判断中被视为比患者的意向更为重要,这是一种现实。

(4) 技術的問題 (4) 技术的问题

緩和医療およびケア技術の未熟さをさす。次の教育の問題と関連する。
指的是缓和医疗和护理技术的不足。这与接下来的教育问题相关。

(5) 医学および看護教育の問題 (5) 医学和护理教育的问题
死に関する教育(Death Education)、緩和医療およびケア技術など、現行の医療者教育 はあるべき終末期医療むよびケアを提供する
与死亡相关的教育(死亡教育)、缓和医疗和护理技术等,现行的医疗人员教育应提供应有的临终医疗和护理
には不十分である。 是不够的。
(6) 医療経済 (6) 医疗经济
過剩医療とそれによる医療費の増大が社会問題となっている。一方で、あるべき終末期医療およびケアの実現のためには社会制度的支援が不可欠である。
过剩医疗和由此导致的医疗费用增加已成为社会问题。另一方面,实现应有的临终期医疗和护理需要社会制度的支持。

(7) 法律的問題 法律的问题
終末期に家族の意向を重視せざるを得ない大きな理由の一つに、訴訟対策を含めた法律問題がある。
终末期必须重视家庭意向的一个重要原因是包括诉讼对策在内的法律问题。

(2)「高齢者の終末期の医療およびケア」 に関する日本老年医学会の「立場表明」
(2)关于“老年人的临终医疗和护理”的日本老年医学会的“立场声明”

以下に「高齢者の終末期の医療およびケア」 に関する日本老年医学会の「立場表明」を要約し て紹介する。「立場」にはそれぞれ<論拠>が示 されているが、ここでは一部を除いて割愛する。
以下是关于“高龄者的临终医疗和护理”的日本老年医学会的“立场表明”的摘要。“立场”中各自都有<论据>,但在这里除了部分内容外将省略。

【基本的立場】 基本的立场

人の老化と死に向かい合う老人医療は、生命科学で得られた成果を基盤にした生命倫理を重視した全人医療であるべきである。
老年医学应当是面对人类衰老和死亡的,基于生命科学成果的重视生命伦理的全人医疗。

立場一1-:高齢であることや自立能力が低下 立场一 1-:高龄和自立能力下降
しているなどの理由により、適切な医療が受 けられない差別に反対する。
反对因各种原因无法接受适当医疗的歧视。
立場ー2—:高齢者の終末期の医療およびケア は、患者個々の価値観や思想 *\cdot 信仰を十分に尊重して行われなければならない。
立场—2—:老年人的临终医疗和护理必须充分尊重患者个体的价值观、思想和信仰。

立場ー3-:終末期医療では、患者の生活の質 (QOL)の維持 *\cdot 向上に最大限の配慮がなされ るべきである。
立场-3-:在终末期医疗中,应最大限度地考虑维持和提高患者的生活质量(QOL)。
立場-4-:終末期の医療およびケアには、患者本人だけでなく家族などのケアも含まれ る。<論拠>終末期の医療およびケアにおい て、患者の家族は重要な役割を担う。患者の病状を家族に説明するとともに、そのことに より生じた家族の悲しみを和らげるなど、医療者は家族に対して積極的に支援する必要が ある。
立场-4-:终末期的医疗和护理不仅包括患者本人,还包括家属等的照顾。<论据>在终末期的医疗和护理中,患者的家属扮演着重要角色。医疗人员需要向家属解释患者的病情,并积极支持家属,以缓解由此产生的悲伤。

【技術的課題】 技术的课题

立場—5-:終末期における医療およびケアは医学のみならず看護 *\cdot 介護、社会 *\cdot 心理など、幅広い領域を含む集学的医療およびケアであ る。
立场—5-:终末期的医疗和护理不仅包括医学,还包括护理、社会、心理等广泛领域的综合医疗和护理。

立場一6—:終末期医療およびケアにおいて施行される医療処置は、患者への利益が医学的 に保証されたものであるべきである。<論拠> あらゆる医療処置やケアに関して、「得られる利益に関する科学的裏付け」の獲得、および「標準化」を目指す努力が継続されるべきと思 われる。「標準化」は医師の「浩意性」を排除 して、患者の「自律性」を保証することを目標 としたものになるであろう。
立场一 6—:终末期医疗和护理中实施的医疗措施应当是对患者有医学上保证的利益。<论据> 关于所有医疗措施和护理,应该持续努力获取“获得利益的科学依据”和“标准化”。“标准化”将排除医生的“随意性”,以保证患者的“自主性”。

立場ー7ー:患者の「尊厳」や「自律性」の尊重 は、個々の文化的背景などに配慮すべきであ る。<論拠>日本人には、医療の専門家に対 する従順性や自らの境遇に対する運命的受容 など、欧米文化とは異なる「死生観」を生み出 した文化的背景がある。高齢者では、情報が開示されることを拒絶する場合すらある。こ のような背景を無視し、十分な援助の準備の
立场ー7ー:患者的“尊严”和“自律性”的尊重应考虑个体的文化背景等。<论据>日本人有对医疗专业人士的服从性以及对自身境遇的宿命接受等与欧美文化不同的“生死观”的文化背景。在老年人中,甚至可能拒绝信息的披露。忽视这样的背景,准备充分的援助。
ない告知は単に死の通告にほかならない。 没有通知无非就是死亡的通告。

【教育的課題】 【教育的课题】

立場一8-:終末期患者が最善の医療およびケ アを受ける権利を保障するために、医療者は実践的な教育を受けるべきである。
立场一 8-:为了保障末期患者接受最佳医疗和护理的权利,医疗工作者应接受实践教育。

立場一9—:「終末期の医療およびケア」は、終末期患者のQOLの向上に役立つものであるこ とを、国民が理解することが望まれる。その ためには国民に対しての「終末期の医療およ びケア」および「死の教育」が必要である。
立场一 9—:“终末期的医疗和护理”有助于提高终末期患者的生活质量,期望国民能够理解。为此,需要对国民进行“终末期的医疗和护理”以及“死亡教育”。

【医療制度的課題】 医疗制度的课题

立場一10—:あるべき「終末期の医療およびケ ア」の実現のためには、社会制度的な支援が不可欠である。
为了实现应有的“临终期医疗和护理”,社会制度的支持是不可或缺的。

【研究に関する課題】 【研究相关课题】

立場一11-:十分な資金提供のもとに、あるべ き「終末期の医療およびケア」の実現を目指す研究の推進が必要である。
在充足的资金支持下,有必要推动实现应有的“临终期医疗和护理”的研究。
【国民的合意 / 社会への公開に関する課題】 【国民的合意 / 社会公开相关问题】
立場一12-:終末期における医療やケア行為の是非を検証できるような、第3者を入れた「倫理委員会」を各医療機関に設置し議論を行うと同時に、そこでの議論を広く公開し国民の意見に耳を傾けるシステムをつくるべきである。
应在各医疗机构设立由第三方参与的“伦理委员会”,以便能够检验末期医疗和护理行为的正当性,并进行讨论。同时,应广泛公开讨论内容,建立倾听国民意见的系统。
【「立場表明」の位置づけ】 【「立场表明」的定位】
立場-13-:この立場表明は過渡的な意見表明 立场-13-:这个立场表明是过渡性的意见表明
であって、今後科学的な手法を用いた検討に より、この立場表明の妥当性自体が検証され るべきものである。
这应该通过今后采用科学方法的研究来验证这一立场表明的合理性。

(3)「立場表明」に対する反対意見 (3)对“立场表明”的反对意见

「立場表明」作成の過程で、倫理委員会案に対 する日本老年医学会学術評議員全員へのアンケ ート調査が行われた。「立場表明」を出すことを含めて倫理委員会案に対してほとんどの評議員 から賛同が得られたが、反対意見もあった。そ れを要約すると以下の二点である。「高齢者の終末期には未だ明確な基準がない。時期尚早であ る。このような時期に学会としての立場を表明 すると医療費抑制のよりどころとして行政に利用されかねない」、「高齢者の終末期は老年医学会だけが責任を負うものではない。この国のす べての学会あるいは医師会などが責任を負うも のである」。
在“立场表明”制作过程中,对日本老年医学会学术委员会全体成员进行了关于伦理委员会提案的问卷调查。大多数委员对伦理委员会提案表示支持,包括发布“立场表明”,但也有反对意见。总结起来有以下两点:“高龄者的临终期尚无明确标准,时机尚早。在这样的时期,作为学会表明立场可能会被行政部门利用作为医疗费用控制的依据”,“高龄者的临终期并非只有老年医学会需要承担责任。这个国家的所有学会或医师协会等都应承担责任。”

4. 高齢者医療に関する実証研究 4. 高龄者医疗相关的实证研究

筆者は倫理委員会委員として「立場表明」作成 に関わったが、あるべき「終末期の医療および ケア」の実現のためには、日本の高齢者の終末期を取り巻く科学的実証データが不可欠であり、現状ではそれが著しく不足しているのを痛感し た。我々が行った最近のいくつかの研究結果を紹介する。
笔者作为伦理委员会委员参与了“立场表明”的制定,但为了实现应有的“终末期的医疗和护理”,日本老年人终末期所需的科学实证数据是不可或缺的,而目前这一点显著不足。我将介绍我们最近进行的一些研究结果。

(1)高齢者の希望や意思表明 (1)老年人的希望和意愿表达

高齢患者 30 名(平均年齢78.3歳)に対して半
对 30 名高龄患者(平均年龄 78.3 岁)进行半
構造化面接を行い質的研究法により終末期に関 する希望の構造モデルを構築した4)。高齢患者 の終末期の希望は家族、身体的状況、医療者と の関係、経験などの因子により影響を受け、容易に変容することが明らかとなった。つまり、「高齢患者は意見が不安定で流動的である」こと が裏付けられた。
通过结构化面试和质性研究方法构建了关于终末期希望的结构模型。老年患者在终末期的希望受到家庭、身体状况、与医疗人员的关系、经验等因素的影响,容易发生变化。这表明“老年患者的意见是不稳定和流动的”。

240名の在宅で死亡した高齢患者(平均年齢 78.6歳)を対象にした前向き研究で、事前指定書を所有していた患者はわずかに約 15 % 15 % 15%15 \% であっ た 5 5 ^(5){ }^{5} 。そもそも我が国では事前指定書が定着し ているとは言えないが、高齢者においては特に その普及は困難であろう。
在一项针对 240 名在家中去世的老年患者(平均年龄 78.6 岁)的前瞻性研究中,拥有事前指定书的患者仅占约 15 % 15 % 15%15 \% 5 5 ^(5){ }^{5} 。本国的事前指定书尚未普及,尤其在老年人中,其推广将更加困难。

(2)高齢者終末期の医療およびケアの実態一過少医療は存在するか—
(2)高龄者终末期的医疗及护理的实际情况——是否存在过少医疗——

前述の前向き研究 5 ) 5 ) ^(5)){ }^{5)} では死亡前48時間以内に実施された医療およびケア行為を調査している が、心臓マッサージ 2.5 % 2.5 % 2.5%2.5 \% 、人工呼吸器 0.4 % 0.4 % 0.4%な0.4 \% な ど、延命のための侵襲的行為はほとんど行われ ていない。この点に関しては、過少医療の問題 というより適切な緩和医療およびケアの普及と考えるべきだと思われるが、非高齢者との比較研究はない(非高齢者の在宅死の比率はきわめ て少ないと考えられるので比較は困難である)。高齢者のうち、65歳以上と80歳以上の比較では麻薬系薬剤の使用量を除いては受けた医療およ びケアに差はなかった。
前述的前瞻性研究 5 ) 5 ) ^(5)){ }^{5)} 调查了在死亡前 48 小时内实施的医疗和护理行为,但心脏复苏 2.5 % 2.5 % 2.5%2.5 \% 、人工呼吸器 0.4 % 0.4 % 0.4%な0.4 \% な 等延命的侵入性行为几乎没有进行。在这一点上,应该认为这是适当的缓和医疗和护理的普及问题,而不是过少医疗的问题,但没有与非老年人的比较研究(因为非老年人在家死亡的比例被认为极少,所以比较困难)。在老年人中,65 岁以上和 80 岁以上的比较中,除了麻醉类药物的使用量外,接受的医疗和护理没有差异。
一方で、東海地域の13の急性期病院の1995年から1997年の間の966名の診療録を後ろ向き に調査した研究では、急性心筋梗塞罹患時に冠
一方,东海地区 13 家急性期医院在 1995 年至 1997 年间对 966 名病历进行了回顾性研究,发现急性心肌梗死发生时冠状动脉的情况
動脈造影検査や冠動脈カテーテル治療は年齢の上昇に伴って施行率か落ちていた。2001年から 2003年の間の414名の超高齢者(80歳以上)を対象にした同様研究で、冠動脈カテーテル治療 が超高齢者でも死亡率を下げることが明らかと なったことを考えると、高齢であるとの理由で標準的な医療が受けられない現実が実証された と言える。
动脉造影检查和冠状动脉导管治疗随着年龄的增长而施行率下降。在 2001 年至 2003 年间对 414 名超高龄者(80 岁以上)进行的类似研究中,冠状动脉导管治疗在超高龄者中也能降低死亡率,这表明由于年龄原因无法接受标准医疗的现实得到了证实。

(3)死に場所による医療およびケアの違い (3)死去地点的医疗和护理差异

病院死の場合には死に際して過剩な延命措置 を受けるのではないか、との危惧が一般的にあ る。ところが、高齢者が多く死を迎える高齢者病院(調査対象は東京都老人医療センター)とホ スピスにおける死亡前48時間以内に実施された医療およびケア行為の比較では、若干の相違は あるものの、かなりその内容は類似していた)。病院死であっても十分な緩和医療およびケアを受けられる可能性を示唆した。ただし、この高齢者医療の専門施設に特有の現象である可能性 が高いので、一般化には慎重でなければならな い。
在医院死亡的情况下,人们普遍担心会接受过多的延命措施。然而,在对高龄者医院(调查对象为东京都老人医疗中心)和临终关怀机构中,死亡前 48 小时内实施的医疗和护理行为进行比较时,尽管存在一些差异,但其内容相当相似。这表明,即使在医院死亡,也有可能接受到充分的缓和医疗和护理。然而,这很可能是高龄者医疗专业机构特有的现象,因此在推广时必须谨慎。

5. おわりに 5. 结束语

日本老年医学会の「立場表明」には、それを出 す目的の中に以下のような記載がある。
日本老年医学会的“立场表明”中,有以下目的的相关说明。

「我が国に生活するすべての人は、人生の最終局面である「死」を迎える際に、個々の価値観や思想 *\cdot 信仰を十分に尊重した最善の医療を受け る権利を有する。最善の医療とは、単に医学的
我们国家生活的每一个人,在人生的最终阶段“死亡”来临时,有权接受充分尊重个人价值观、思想和信仰的最佳医疗。最佳医疗不仅仅是医学上的。
な知識 *\cdot 技術のみでなく、他の自然科学や人文 *\cdot 社会科学を含めたこの国のすべての知的 *\cdot文化的成果を還元した医療であると思われる」。高齢者とは、まさに「我が国のすべての知的 *\cdot 文化的成果」 が還元されるにふさわしい人々である。
这不仅是知识 *\cdot 和技术,还包括其他自然科学和人文 *\cdot 社会科学,是这个国家所有智力 *\cdot 文化成果回馈的医疗。老年人正是“我们国家所有智力 *\cdot 文化成果”得以回馈的合适人群。
参考文献
1)森田達也、角田純一、井上聡ほか:高齢癌患者の緩和ケ アの特徴. Geriatric Medicine 35:1505-1511, 1997
1)森田达也、角田纯一、井上聪等:高龄癌症患者的缓和护理特点。《老年医学》35:1505-1511, 1997

2)横内正利:高齢者の終末期とその周辺一みなし末期は国民に受け入れられるか—。『社会保険旬報』1976:13 —19, 1998
2)横内正利:高龄者的终末期及其周边——被视为末期的情况是否被国民接受——。《社会保险旬报》1976:13—19, 1998

3)社団法人日本老年医学会:「高齢者の終末期の医療およ びケア」に関する日本老年医学会の「立場表明」、『日本老年医学会雑誌』38:582—583, 2001
3)社团法人日本老年医学会:“关于老年人临终期的医疗和护理”的日本老年医学会“立场表明”,《日本老年医学会杂志》38:582—583, 2001

4)A. Hattori, Y. Masuda, K. Uemura, et al. A Qualitative exploration of elderly patients’ preferences for end-of-life care. JMAJ 48 : 388-397, 2005
4)A. Hattori, Y. Masuda, K. Uemura 等. 老年患者对临终关怀的偏好定性研究. JMAJ 48 : 388-397, 2005

5)平川仁尚、益田雄一郎、植村和正ほか:高齢者の在宅終末期に関する前向き研究。ホスピスと在宅ケア 13:220224, 2005
5)平川仁尚、益田雄一郎、植村和正等:关于老年人在家中临终期的前瞻性研究。《临终关怀与居家护理》13:220224, 2005

6) Y. Masuda, H. Noguchi, K. Uemura, et al. Comparison of medical treatments for the dying in a hospice and a geriatric hospital in Japan. J. Palliat. Care 9: 152-160, 2006
6) Y. Masuda, H. Noguchi, K. Uemura 等. 日本一家临终关怀医院与一家老年医院的临终医疗治疗比较. J. Palliat. Care 9: 152-160, 2006

『学術の動向』平成18年 7月号以降の特集テーマ(予定)
《学术的动向》平成 18 年 7 月号以后的特集主题(预计)

『学術の動向』では、今後の各号の特集テーマを以下のように予定しておりますので、ご期待ください。
《学术的动向》将会在今后的各期中安排以下特集主题,敬请期待。
平成18年 7月号 「公共性ルネッサンス—21世紀の市民社会を考える—」
平成 18 年 7 月号 「公共性复兴—思考 21 世纪的公民社会—」

「日本学術会議第148回総会」 日本学术会议第 148 次总会
8月号 「臨床医学研究の発展をめざして」(仮題) 8 月号 《为了临床医学研究的发展》(暂定标题)
「科学上のミスコンダクト」座談会(仮題) 「科学上的不当行为」座谈会(暂定标题)
9月号 「海洋生物学」(仮題) 9 月号 《海洋生物学》(仮题)
「統計から見た日本の経済格差」(仮題) 《从统计看日本的经济差距》(暂定标题)